ん?どこかで見たような光景です。
そう。私は本日ライトを連れて
一昨日は下車した新神戸を新幹線で通過いたしました。
今日はライトの引き渡しの日。
前日に友達の厚意でイロハを預かってもらい
朝4時45分に家を出て始発の新幹線に乗りました。
目指すは九州博多です。
ライトもキャリーの中でガサガサと暴れながら
新幹線に乗ること5時間。
博多に到着する1時間前に、
ライトの新しい飼い主になる予定のKさんから
メールが入りました。
「仕事関係で不幸があり、
既に家を出てしまい夜にならないと戻らない」
という冒頭の文章を読んで、
その瞬間に私は頭が真っ白になりました。
新幹線で博多まで向かい、
Kさんと一緒に動物病院でライトの健康診断をしてもらい、
それからKさんの家に一緒に行ってライトを置いて飛行機で帰る。
そのスケジュールで1日をフルに使って動く予定でした。
Kさんからのメールは続きます。
「代理の者を駅に向かわせました。お金も印鑑も預けてあります。
動物病院までその代理人と一緒に行って頂き、
動物病院でライトを代理人に渡してもらえませんか。」
という主旨の内容でした。
そのメールを読んですぐに思ったこと。それは
どうやってライトと一緒に帰ろうか。
行きはライトを連れて行くので新幹線を選びました。
帰りは私1人なので飛行機で、と思っていました。
しかしライトも一緒に帰るとなると、さあどうしよう?
ライトを飛行機に乗せて、予定通りの時刻の飛行機で一緒に帰る。
それまでは、4時間以上あるから博多近辺をライトと一緒にウロウロしよう。
そう決めました。
すぐにKさんに返事をしました。
「ご不幸は急なことですから大変だと思います。
私がKさんの立場だったら、きっと同じ手配をしたと思います。
しかし今日はこのままライトを連れて帰ります。
お気持ちが変わらなければ、後日また参りますのでライトを迎えてやってください。」
不幸は突然訪れます。これはもうどうしようもありません。
仕事をしている以上、仕事関係で不幸があれば駆けつけなくてはなりません。
これも社会人なら当たり前のこと。
バタバタしているなかでも、Kさんが代理人を立てて駅まで私を迎えに来て
Kさんの代わりにライトを引き取る手続きを代理人に任せる手配をしてくださったことはありがたかったです。
Kさんができるベストなことだったと思います。
しかし私としては、Kさん本人にお会いして、
ライトがこれから暮らしていく場所までライトを連れて行って置いてくることが目的でした。
その目的が果たせない以上、私が博多に来る意味はその時点でなくなるのです。
言いづらいことではありましたが、Kさんにはメールでそのようにお話しをしました。
しかし喪の席で忙しく動くKさんがメールを見られる時間はないだろう、ということもわかっていました。
博多駅で代理人に会うことができました。
「Kさんにライトをお渡しするために私は参りました。
Kさんではない知らない貴方にライトは渡せません。」
申し訳ないですが、こういうことははっきりと伝えるべきだと思い、
「あなたには渡せません」と代理人に明言しました。
代理人の電話を借りてKさんと話ができました。
やはり私からのメールをご覧になっていなかったKさんは、
私の「このまま帰る」コールを聞いて一瞬言葉を失っていました。
そりゃそうでしょう。
楽しみに待っていてくれたんです。
ライトの部屋もケージも首輪もエサも、何もかも用意してKさんはライトの到着を待っていてくれたんです。
Kさんの落胆は、私にもそれはそれは伝わりました。
それでも私は気持ちを変えることはできませんでした。
電話口でしばらく無言ののち、Kさんは言いました。
「何とか。何とかします。何とかしますので、とりあえず代理の者と一緒に動物病院まで行ってもらえませんか。」
私と代理人が動物病院まで向かう間に、通夜の席から抜けられるかどうか、抜けられるならいつ抜けられるか。
それが私の飛行機の時間から逆算してライトの引き渡しに間に合う時間なのか。
Kさんは考えてから連絡をすると言いました。
「わかりました。そうしましょう!私もライトをKさんに渡したいです。何とかお願いします。」
電話を切り、代理人と共に動物病院へ向かいました。
動物病院で待つこと40分。
Kさんからの連絡はありません。
代理人にお願いしてKさんと連絡を取ってもらいました。
「時間が大丈夫であれば、診察を受けて自宅まで来てもらえないか。」
Kさんからの伝言を代理人から伺いました。
本当はKさんと一緒に病院で健康診断を受けたかったです。
ライトの飼い主になる人の目の前で獣医師に診断してもらい
ワクチンの相談を通じて飼い主と獣医師が会話をしてもらう。
それが動物病院で健康診断をしてもらう主たる目的でしたから。
しかし今回は特別です。
Kさんだって好きで来られなくなったわけではありません。
むしろライトが来る2日前に病院に電話を入れて、午前診療に間に合うように計らってくれていたくらいですから。
健康診断の結果は異状なし。健康です、と言ってもらえました。
ワクチンも、Kさんに確認をしてノビパックを打ってもらいました。
次に向かうはKさんの自宅です。

本当に素敵な田んぼが広がっています。
私はこういう風景が大好きなのです。
ライトのお部屋が用意されていました。
たぶん、ライトが成長するにつれ
畳はボロボロにされるでしょう(^^;)
フェネックはホリホリするのが好きな生き物です。
そして畳は最高のホリホリスポットです。
ライトをKさんの家に置いて、空港まで送ってくださる代理人の車に乗りました。
頭を下げて見送ってくれるKさんの姿に背を向けた瞬間
私はハンカチで顔をおさえて「うえーん(号泣)」
代理人、びっくり。
だからさ、泣くくらいなら手放すなって。
手放すくらいなら、みっともなく泣くなって。
自分でもわかっているんです。
わかっていても、ライトが生まれてから50日余り。
毎日毎日慈しんで育ててきた小さなキツネとの別れは
こらえようのない涙と引き換えに踏ん切りをつけるしかないのです。
定刻より30分遅れで飛行機は博多を離陸しました。
なんか懐かしいな、この感覚。
アメリカで生活していた頃、年に1~2回の頻度で日本に帰国していました。
最後に飛行機に乗ったのはいつだっけ?
思い起こせば6年前に1人で南米に行ったとき。あれが最後でした。
6年ぶりの飛行機かぁ。
1時間半後、無事に羽田に着陸態勢をとった飛行機。
フライトアテンダントの機内アナウンスを聞いて思い出したことがあります。
アメリカと日本を往復する国際線の飛行機では、日本語と英語のアナウンスがあります。
着陸前のアナウンスでフライトアテンダントが必ず言う締めの言葉がありました。
「ごきげんよう!さようなら。」
今はもう言わなくなったかな。こんな古臭いフレーズ。
慣れない海外での生活。楽しいことや辛いこと、悲しいことや悔しいこと。
いろんな感情を経験した後で乗る飛行機。
「ごきげんよう!さようなら」
この言葉を聞いて、日本に帰るときは「ただいま」と思ったし
アメリカに帰るときは「よし、また頑張ろう」と思ったものです。
ちょっと滑稽な響きの言葉ではありますが、その言葉を聞くと切ないような、嬉しいような。
何だか甘酸っぱい思いが胸をよぎります。
6年ぶりの飛行機でライトを博多に届けた日。
だから私にとって特別なこの言葉を今日はライトに贈ります。
「ごきげんよう!さようなら。」
ライト、幸せになるんだよ。
Kさん、ライトのことをどうかよろしくお願いいたします。