2.実際に起きたこと、そして感情のぶちまけ
2017年11月。
今まで犬用の2種混合ワクチンをフェネックキツネ達に接種させていましたが、
今後は一切のワクチン接種を行わないことを心に決めました。
今年譲渡したフェネックベビー2匹が、それぞれ生後8週目に
犬用の6種混合ワクチンを接種後に実際にジステンパーにかかって死亡したからです。
そして遡ること15年。私の友達のフェネックも、
2002年に犬用のワクチン接種した後にジステンパーに感染して死亡しています。
ワクチン接種をすることにより、予防すべき病を逆に発症してしまうことなんかあり得ない。
今までそう考えていました。
万に1つはそのような可能性もあるかも知れないけれど、
それ以上に予防できる効果の方がリスクを上回るはず。
そう考えて、私はフェネックキツネにワクチンを接種していました。
しかしその考えは間違っていたのだと、フェネックというものは
私が考える以上に繊細で敏感な動物なのだと思い知りました。
ワクチン接種によってジステンパーを発症する。
以下、しばらく感情的な文章が続きますが、
それだけワクチン接種が想像以上に危険なものであることを
書いていきたいがためですのでご了承ください。
なお、とりあえず感情をぶちまけますが、
その後は獣医師からの話も踏まえて落ち着いてこの問題を語りたく思いますので、
その文章を読みたい人は下の感情論をすっ飛ばしてください。
--- 感情のぶちまけ、ここから --------
フェネックキツネのベビーに、犬用の混合ワクチンを打たないで!
最初に強く申し上げます。
混合ワクチンをフェネック、
それも生後1年未満のフェネックに打つことは
全くもってお勧めしません。というか、打たないで!と強い言いたいです。
なぜならワクチン接種によって、実際に子どものフェネックが
ジステンパーを発症する可能性があるからです。
こう書くと、大抵の獣医師は言うでしょう。
そんなことは理論的にありえない。ワクチンが何たるかを理解していない。
ワクチン接種によって、
予防すべき病気を逆に発症することはあり得ない話なのだ、と。
勝手に言ってろ。机上論はいらん。
でも打つな。生後1年未満のフェネックの赤ちゃんに絶対に打つな、
と私は言いたいです。
以下のことを理論的に説明づけられないうちは、
フェネックが若いうちに混合ワクチンは接種するな、と。
3匹のフェネックキツネがジステンパーに感染して死亡している。
飼育場所が異なる3匹だが、
この3匹の死について共通して言えることが1つだけある。
それは混合ワクチンを接種した約2週間後に発症していること、
そして3例のうち2例については
実際にジステンパーに感染しての死亡であることが
確定診断されていること、だ。
ジステンパーの感染から発症までの潜伏期間が2週間であること、
および他のジステンパーを疑う動物とは一切接触してないことを考えると、
ワクチン接種によってジステンパーに感染したと考えざるを得ない。
これを読んでくれている、
全ての未来のフェネックベビーの飼育者に伝えたいです。
そして同じくこのサイトを見つけてくれた、
全てのフェネックを診る獣医師に伝えたいです。
何歳なら接種しても大丈夫、というところまではわかりません。
少なくとも生後1年未満のフェネックキツネに、
犬用の混合ワクチンを打たないでください。
今のところ2種混合ワクチンを接種したフェネックキツネには、
我が家も含めてジステンパーの発症例は私の周辺ではありません。
しかし6種混合ワクチンを接種した場合に限り、
3例ものフェネックベビーが接種から13~14日後に
急激に体調を崩し死亡しています。
うち2匹は外部機関に鑑定を依頼した結果、
ジステンパーの感染が認められました。
6種混合ワクチンは猿の細胞を用いて培養されます。
2種混合ワクチンは鶏の細胞を用いて培養されます。
ワクチン接種による強いアレルギー反応が生じるのは
サルの細胞を用いたワクチンに多いと言われています。
これが原因かどうかはわかりません。そこまではわかりません。
しかしわかっていること、
それは6種混合ワクチンを接種したフェネックの子供に、
実際にジステンパーの発症があったということです。
しかしだからと言って2種混合が、5種混合が、7種混合が
フェネックの赤ちゃんの命を奪わないとは限りません。
消去法で考えてください。
ワクチンの理論だのどうでもいいんです。
実際に、3匹のフェネックがワクチン接種後に実際にジステンパーに
感染してしまっているのです。
となると、ワクチンを打つことにより実際にフェネックベビーが
ジステンパーを発症する可能性があると考えられませんか。
私はもう見たくありません。
ちいちゃなフェネックの赤ちゃんが、
まだ生後3か月に満たないフェネックが、
痙攣しながら死んでいく姿をもう見たくありません。
3匹の発症例があると申し上げました。
1匹目は私の友達が初めて飼ったフェネックキツネでした。
これはジステンパーの確定診断が出ており、
獣医師学会で報告もされています。
2匹目は我が家で生まれ譲渡したフェネックベビーでした。
私はフェネックベビーの所有権を私に戻してもらい、
亡骸を連れ帰ってきました。
3匹目も我が家で生まれ譲渡したフェネックベビーでした。
この子も私に所有権を返してもらうと同時に病院に依頼して遺体を解剖して
ウイルス検査をしてもらいジステンパー感染の確定診断を受けました。
もう見たくありません。
妊娠中の母フェネックと語り合いながら出産のときを迎え、
生まれた赤ちゃんを毎日人工保育で育て、
大事に大事に育てた可愛いフェネックの赤ちゃんが
痙攣しながら死ぬ姿なんかもう見たくありません。
時間をかけて、労力もかけて、
愛情もたっぷりかけてフェネックベビーを育てたのは、
わずか2ヶ月でジステンパーで死なせるためじゃない。
連れ帰ってきた穏やかな寝顔の2匹のフェネックの赤ちゃんを見て、
どれだけ苦しんだ後にこの穏やかな表情ができるようになったんだろう、
どれほど私を呼んだだろうか、なぜ譲渡してしまったのか、
黒い、真っ黒い感情が渦巻きました。
--- 感情のぶちまけ、おわり ------------
3.少し冷静に。ジステンパーの確定診断に至るまで
3匹目のフェネックCの治療にあたってくれたのは
田園調布にあるエキゾチックに強い動物病院のT院長でした。
フェネックCとは2017年8月生まれのサツキです。
砂の月と書いて砂月(さつき)。本当にお月様になっちゃったね。。。
あ、また感情的になってしまう。話を戻さなくては。
サツキは譲渡してから1か月後に飼い主宅で体調を崩しました。
サツキの症状を診て、T院長はすぐに犬ジステンパーを疑いました。
症状がジステンパーに酷似していたからです。
しかしその疑念は飼い主の言葉でいったんはT先生の中で払拭されました。
「6種混合のワクチンを接種しています。」
ワクチンを接種しているのにジステンパーにかかることはないだろう。
これが普通の獣医師の考え方です。
しかしT先生はやはりその後もジステンパーの疑いを
完全に消し去ることができませんでした。
理由は2つあります。
1.ワクチンを接種した場合、稀に、本当に確率は低いが
ジステンパーに感染する可能性があるから。
2.実際にワクチン接種後にジステンパーになったフェネックキツネを
診たことがあるから。
上の表のフェネックAを診たのがT先生なのです。
フェネックAの飼い主は私の十年来の友人で、
T先生のことはその友人からよく聞いていました。
そのため、サツキの飼い主から
「セカンドオピニオン先としてどこか動物病院を紹介してほしい」
と依頼されたときにT先生を紹介しました。
飼い主からT先生の動物病院までのほうが、
私がかかりつけのとしてお世話になっている動物病院よりも
距離が近かったからです。
血液検査をしても数値に異常は全く見られず。
入院して様子を見ることになりました。
入院3日目に私が面会に行きました。
意識を失ってただ静かに痙攣を続けるサツキを目にして、確信しました。
そしてT先生に言いました。
「サツキは8月生まれですが、
5月生まれに同じように死亡したフェネックがいます。
このサツキの症状と全く同じです。
そしてその子も、
6種混合ワクチンを接種した2週間後に発症して死亡しました。」
私はT先生にありったけの情報を伝えました。
・2種混合ワクチンを打ったフェネックにはこのようなことは起きていないこと
・5月生まれのフェネックが死亡したときは
ジステンパーを疑わなかったこと(ワクチンを接種していたから。)
・思い返せば私の友達のフェネック(=フェネックA)が
ワクチン接種後にジステンパーで死亡していること。
・サツキも5月生まれの子も、ワクチン接種から2週間後に発症していること。
などなど。
T先生も
「やはりそうなるとジステンパーの可能性が非常に高くなってきます。
そして、このサツキちゃんの症状はジステンパーの症状そのものなので
疑いの余地がなくなります。」
そして続けて先生はおっしゃいました。
「ワクチンによって逆に病を発症することは非常に稀です。
可能性は限りなく低いです。
しかしこうして実際にフェネックがワクチン接種後に発症しているとなると、
ワクチンの理論云々よりも現実的にワクチン接種で
ジステンパーに感染した可能性があると考えないといけません。」
もしジステンパーであれば、と私が尋ねると、
「まず助かりません。」
予想していた通りですが、改めて先生の口から聞くとその言葉の重みが増します。
ただ、目の前のサツキの様子を見れば、
やはり先生のおっしゃる通りだと認めざるを得ません。
前日には飼い主が面会に来て、
その飼い主の姿を見て一声鳴いてシッポを振ったというサツキ。
そのサツキは今はもう横たわり、目を閉じ、痙攣を続けるだけの状態。
私はサツキに酸素ケージのドア越しに声をかけました。
「さっちゃん。サツキ。さっちゃん、サツキ。」
人工哺育でミルクを与えていた時、
私はサツキを「さっちゃん」と呼んでいました。
譲渡した先でサツキは新しい名前をもらったけれど、
私の中ではサツキはいつまでもサツキでした。
あまり長居をしては申し訳ないと思い、
名残惜しくもサツキのいる部屋を後にする前に
もう一度だけサツキを見て思いました。
これが、生きているこの子を見る最後になるだろう。
本当は触りたかった。優しく体を撫でてやりたかった。
ドアを開けて耳元で名前を呼んでやりたかった。
でもできなかった。
酸素ケージの扉は当然ながら固く閉ざされていたし、
私はもうサツキの飼い主ではないのだから。
サツキ、さようなら。
言葉にはできなかったけれど、
あの時私はサツキにきちんと別れを伝えられたと思います。
翌日の朝、飼い主からの電話が鳴りました。
サツキが前の晩に息を引き取った、と。
「解剖をさせてもらえないかと院長先生に言われたので、
勝手ながら承諾しました。」
いえいえそんな。飼い主はまだ貴方ですから。解剖を承諾してくれてありがとう。
解剖が終わったサツキの体を引き取りに行ったのは
それから3日後でした。既に確定診断が出ていました。
正直、早いなぁと思いました。
外部機関に鑑定を委ねるのですから1週間はかかるだろうと考えていたのですが、
なんと3日で既に検査は終わっていました。
「ジステンパーです。確定されました。」
T先生の言葉に、ああやっぱりという思いと、
どうしてこんなことに、という思いが入り混じります。
「肺からも脳からもジステンパーウイルスが検出されました。」
そしてここからT先生との長い話が始まります。
T先生は経験は勿論ですがその知識も多く、
また学ぼう知ろうという意欲が高く、今回のサツキの件を受けて
色々と動いたり調べたりしてくださっていたようでした。
まず、サツキの検体ができたことが本当に貴重だということでした。
フェネックを飼育している人が少なく、
さらにフェネックでこのような症例が出ることが珍しく、
また解剖を快諾してくれる人も少なく、
ひいては検査を受け入れてくれる機関も通常であればなかった、と。
たまたまサツキがこのようなことになり、
タイミングよくT先生の知り合いで病理解剖を受け入れてくれる先生がいて、
またその先生が別にウイルス検査をしてくれる先生とつながっていたために
実現した確定診断でした。
サツキの体は死亡してすぐにT先生の知り合いのところに送られ、病理解剖。
解剖段階の肉眼的な所見では決定的なジステンパーの根拠は見て取れず。
しかし解剖して取り出した内臓を今度は別の機関に送って
ウイルス遺伝子検査をしてもらい、
そこでジステンパーウイルスの検出に至りました。
解剖後のサツキの体はまた病院に戻って来て、
それと時を隔てずして検査結果もすぐに届いたという、
まさにゴールデンルートを通ることができたのです。
「調べてみたのですが、」
T先生が口を開きました。
「海外の論文では、実際に犬でもワクチンによって
ジステンパーにかかっているらしいです。
今回の件ですが、ワクチンを生成する段階で使われるジステンパー株は
1種類ではなく複数の株の種類があり、
どのワクチンにどの株が使われているのか、
そこまで特定する必要があると思われます。
というのも、ワクチン接種によって逆に病を発症する事例が
1980年代に多く報告されたため、あるウイルス株をもつワクチンが
1990年代に回収されたことがあります。
しかしその後も、発症した動物の個体を検査したところ、
回収されたはずのワクチンに類似した株のウイルスが検出されたとの
報告があります。
すなわち未だにジステンパーを発症させる可能性があるワクチンが
市場に出回っているということです。
今回のサツキちゃんの体から検出されたジステンパーウイルスが
どの株にあたり、どのワクチンに使われている株なのかを
特定しないといけないと感じています。」
私は最初、諸悪の根源は6種混合ワクチンだと考えていました。
しかし上の表に記載したとおり、
死亡した3匹は全く別の会社が作ったワクチン接種で発症しています。
「こうなると6種だから、とか2種だから、というレベルの話ではなく、
もっと深いところで一体どのウイルス株を使うと発症してしまうのか、
というところまで解明しないといけなくなります。」
おそらく何千、何万という数のフェレットにも
犬用のワクチンが打たれていますが、実際にそれが原因で
ジステンパーになったという事例をあまり耳にしません。
T先生も経験がないと言います。
フェネックは当然ながらフェレットに比べると飼育者数はかなり少なく、
さらにはその中でもフェネックにワクチンを打つ飼育者となると、
その数はもっと少なくなります。
元々の母数が少ない中でこれだけの発症例が出ているというのは
まさに異常であり、フェネックは体こそフェレットよりも大きいけれど、
ワクチンに対してはフェレットより敏感であると言えるでしょう。
病気を防ぎたくてワクチンを打つのに、
そのワクチンが元で防ぐべき病気を発症するなんて。
本末転倒どころの騒ぎではありません。
冷静に考えれば、フェネックにワクチンは必要でしょうか。
犬のように散歩をするわけでもないフェネックが、
実際にジステンパーに感染する可能性はどのくらいのものでしょうか。
例えジステンパーのウイルスが、
飼い主の服に付着したものでさえ感染能力があるとは言っても、
ワクチンをしないことによってジステンパーに感染する可能性よりも、
ワクチンを接種してそれが原因でジステンパーに感染する可能性のほうが
高いのではないかということは、
現実的にこうして3匹のフェネックがワクチン接種で
ジステンパーに感染していることを考えればおよそ頷ける話ではないでしょうか。
T先生は今回の事例を受けて、獣医師にむけて発表しようと考えました。
「考えた」と過去形になっているのには理由がありました。
T先生が今回の症例を他の獣医師と検討する中でこんな意見が出たそうです。
「もし発表したとしても、
『そもそも犬用に開発したワクチンをキツネに打っているのが間違いであり、
それ自体がミスにすぎない』と指摘されたらそれまでだろう。
発表にはリスクがある」と。
「もしかしたら、実はもっと多くのフェネックが
ワクチンに起因したジステンパーになってるかもしれないのに、
こういった理由で報告されていないかもしれません。
事実、これまで発表された論文でも、
フェネックとワクチンに関するものは非常に少ないです。」
科学論文として公表されていないだけで、
もしかしたら世界中で幾人かの獣医師は、私達にとって有益な
フェネックとワクチンの情報を持っているかも知れません。
こういった事例を広く発表できれば、
日本のみならず海外でフェネックを飼育している人達にとっても
有益な情報となりうるのに。
なんてはがゆいんでしょう。
しかし今や時代はインターネット。
個人が情報を自由に発信できる時代です。
だからこそ、私は今回のことをこうして知らせていきたいと思います。
これまで何か事件や事故があるたびに
テレビや新聞で見聞きしていた言葉があります。
「第二、第三の被害者を出したくない。
こんな思いをするのは自分たちだけでたくさんだ。」
事件の被害者や被害者の家族は必ずこう語っています。
あまりに多くこの類の言葉を見聞きするので、
私は何だか慣れてしまっていました。
彼らがどんな思いでその言葉を発するのか、
そういうところに思いを馳せることすらしなくなっていました。
しかし今回、彼らの言葉は本当にその通りだ、と、
それ以外の表現方法が見つからないと感じました。
これ以上ワクチン接種で命を落とすフェネックを出したくない。
こんな思いをするのは私で十分だ。
心からそう思います。
5月生まれのフェネックは砂夢(サム)でした。
サムもサツキも自分では何もできませんでした。
飼い主が与えたものを食べ、与えた場所で遊び、
連れて行った病院でワクチンを接種されました。
サムにもサツキにも「ワクチン打たないで」と言う能力はありませんでした。
ただ接種されるがままに、おとなしくいい子で注射を受けたのでしょう。
その2週間後にもがき苦しんで死んでしまうことになるとも知らずに。
可哀想で可哀想で、ただただサムとサツキが可哀想でなりません。
大人になれなかった小さな体。本当はもっと体が大きくなり、
シッポも立派になるはずだったのに。
私の両手に包まるほどの小ささで成長は終わってしましました。
いかにも子ぎつねという感じの細っこいシッポのままで逝ってしまいました。
その細いシッポすら振る力を失いました。
サツキを連れ帰った夜に、私はそっとサツキの体を両手で包みました。
ジステンパーのウイルスがまだ生きているかも知れないがゆえに、
飼い主に「怖い」とまで言われてしまったサツキの体。
可哀想に。ウイルスが充満した体になんてなりたくなかっただろうに。
サツキのせいじゃないのに。
サツキはただ言われるがままにワクチンをおとなしく打たれただけなのに。
触られるのすら怖がられるような体になってしまったなんて。
こんな体になってしまったサツキを抱いてやれるのは
私だけになってしまいました。
私はサツキを胸に寄せて、撫でて、匂いを嗅ぎました。
片方の手の平で転がるほどの大きさで生まれてきたサツキが、
ナイルのおっぱいを飲んで私やペットシッターさんが与えるミルクを
ごくごく飲んで。離乳食に切り替えて。カリカリフードに切り替えて。
少しずつ少しずつ大きくなってくれました。
大人の半分の大きさで一生を終えたけれど、
それでもここまで大きくなってくれてありがとう。
おかえり、サツキ。
もうどこにも譲らないからね。
他の全てのフェネックの赤ちゃんに、こんなことがおきませんように。
生後1年未満のフェネックキツネにワクチンを打たないでください。
以下は私は初めてフェネックベビーを育てた2012年に、
そのフェネックの赤ちゃんへのワクチン接種に悩んだ時に書いた記事です。
まだブリーダーになる前ですので、
自分のフェネックベビーにワクチンをどうするか、
それを考えていたときの記事です。
-----------------------------------------------
4.まだのんびりとワクチン接種について考えていた頃のはなし
フェネックは犬科の動物です。
犬がかかる病気にフェネックもかかる、
と考えてよいでしょう。
防げる感染症はワクチンで防ぎたい。
しかし飼い主によっては
あえてワクチンを打たない人もいます。
私の周りにも、
以前ジステンパーワクチンをフェネックに打ち
そのワクチンによって
実際にフェネックがジステンパーにかかってしまい
それはそれは悲しい思いをした飼い主がいます。
もちろん、その飼い主はその後
フェネックにワクチンは二度と打たないと
心に決めています。
そもそも犬に打つワクチンを
フェネックに打つ意味があるのか
ワクチンの効果を疑問視する飼い主もいます。
効果もわからないのに
あえて病原菌を体に入れる必要はない、と。
その飼い主もワクチンを打ちません。
フェネックベビーのワクチン接種について
獣医さんに相談しました。
フェネックの診察経験が少ない獣医さんなので
「犬を例にすると」という前提でお話いただきました。
ブリーダーはとにかく早くワクチンを接種します。
一般家庭より多くの動物を抱えるブリーダーにとって
1匹が感染症にかかると
全部に感染するというリスクがあります。
そのリスクを回避するために
生後28日で打てるワクチンを選んで打ちます。
できる限り早めのワクチンを。
ワクチン製薬会社が推奨する月齢に達していなくても
ワクチンによる副作用を追及しないという誓約のもと
早めの接種をするブリーダーもいます。
また、母親の免疫が生後何日まで持つのか。
これもわかりません。
母親からもらった免疫が体に残っている間は
ワクチンを打ってもあまり意味がありません。
意味がなくても感染リスクを重視し
早めにワクチンを接種させるブリーダーもいます。
これらを「捨てワク」と言います。
ワクチン接種は法的義務はありませんので
飼い主の意向が100%影響します。
私はどうしよう。
ワクチンで防げる犬の感染症は主に以下の7つ。
犬ジステンパー
犬伝染性肝炎(アデノ1型)
アデノウィルス2型
パラインフルエンザ
パルボウィルス
レプトスピラ
コロナウィルス
この中でジステンパーとパルボウィルスの致死率は高く
特に子犬がこれらに感染すると
あっという間に死んでしまいます。
パルボウィルスは接触・飛沫の両方で感染し
保菌者の体から離れた後も、菌は半年でも2年でも生存し
次の感染対象にうつっていきます。
冒頭にも書いたように、
フェネックは犬科の動物です。
では犬科のキツネに感染する可能性が
既に判明している病気はどれでしょうか。
犬伝染性肝炎(アデノ1型)
アデノウィルス2型
この2つの感染症は
キツネが保菌者になり得ることがわかっています。
次に、
犬に限定しない犬科の動物がかかる病気として
犬ジステンパー
が挙げられます。
この3つ以外の感染症、すなわち
パラインフルエンザ
パルボウィルス
レプトスピラ
コロナウィルス
この4つの感染症は犬がかかる病気とされており
キツネへの感染は明言されていません。
ものすごーく迷いました。
すべての感染症リスクを回避するために
7種混合ワクチンを打つべきか
病原菌を何種類も体に入れるリスクを回避するために
3種混合ワクチンだけを打つべきか。
打つのであればその時期をどうするか。
飼い主の決断を下さなくてはいけません。
考えあぐね、
今回(2012年5月生まれ)の赤ちゃんには
・生後7週までワクチンは打たない。
・生後7週に3種混合ワクチンを打つ。
まずはこの2つを決めました。
その後のワクチンはこれからまた考えていきます。








書き足し、書き足しで、遂に目次が必要なほど
非常に長いページになってしまいました。
1.毎年ワクチン接種しているフェネックもジステンパーに罹患したと
報告を受けました
2.実際に起きたこと、そして感情のぶちまけ
3.少し冷静に。ジステンパーの確定診断に至るまで
4.まだのんびりとワクチン接種について考えていた頃のはなし
5.犬ジステンパーワクチンに関する海外の文献概訳と所見
----------------------------
1.毎年ワクチン接種しているフェネックもジステンパーに罹患したと
報告を受けました
犬ジステンパーワクチンを接種することで、
逆にフェネックがジステンパーを発症してしまう。
そんなことあるもんか。
大抵の人はそう思うかも知れません。
しかし実際に起きているのだということを知って頂きたく、
このページを書いています。
2017年秋に下の記事を書いたところ、それを読んで初めて
「私のフェネックはジステンパーで死亡したのだとわかりました」
とフェネックの死因がわかった飼い主さんがいました。
ワクチン接種をしてから3週間以内のできごとで、その飼い主さんも
ワクチンを打っているからこそ逆にジステンパーを疑うことなく
死因を特定できないまま、自分の飼い方が間違っていたのかと、
何がいけなかったのかと思い悩んでいたようです。
その気持ちがとてもよくわかり、
飼い主さんの気持ちを考えて胸が締め付けられました。
その後、他のフェネックブリーダーさんから
過去に3頭のフェネックをワクチン接種後に亡くし、
以来ワクチンを打たなくなったという話を聞きました。
日本全国で、これまで一体何頭のフェネックが
ワクチン接種後に死亡しているのか。
これだけ周囲にワクチンに起因すると思われるジステンパー発症が
あるのであれば、フェネックにワクチンを打つのは
あまりにも危険なのではないか。
ただ、犬ジステンパーワクチンは決して悪ではないということも
書いておかなくてはなりません。
後の文献概訳でも書きますが、これまでにもフェネックに限らず
犬でもワクチン接種後にジステンパーの症状で死亡している報告は
ニュージーランド、イギリス、アメリカ、と至る所でなされています。
しかし一方で、ワクチンの普及によりジステンパーに罹患する犬の数が
激減していることも事実です。
昨年死亡した我が家で生まれたフェネック2匹(サムとサツキ)も、
3歳10か月で死亡したフェネックも、
かかりつけの獣医師の所見ではジステンパーとは見抜けませんでした。
3歳10か月のフェネックには1人の獣医師が担当し、
サムには2人の獣医師が診て、
サツキにも最初は1人の獣医師が診察に当たりました。
そして4人の獣医師の誰もがジステンパーだとは疑いもしなかったのです。
5人目の、最後にサツキの治療に当たった獣医師だけが、
サツキの症状を見てすぐにジステンパーを疑いました。「典型的な症状だ」と。
典型的な症状なのに、4人もの獣医師の誰もが「ジステンパー」の言葉を
出さなかったのはなぜか。
ジステンパーに罹患した犬、
特に初期症状の犬を実際に見た経験がないからだと私は思っています。
獣医学部時代にビデオか何かで罹患した犬の映像は観たことはあっても、
実際に動物病院に勤めている間にジステンパーに罹患した犬が
運ばれたことがない、ということでしょう。
5人目の獣医師は経験豊富であることに加え、
実際にジステンパー罹患のフェネックを診たことがあるからピンときたのです。
すなわちワクチン接種が普及している今、
飼い犬がジステンパーに罹患する確率なんて、
また室内飼育が基本のフェネックがジステンパーに感染する確率なんて
それほど高くはないのではないかと考えてしまいました。
そうであれば、フェネックにワクチン接種するなんて、
それこそ逆に罹患の可能性を高めるだけでしかないのでは、と。
「昔は結構ありましたよ。ジステンパーの症状で運び込まれてくる犬が。
最近は滅多に見なくなりましたが。」
これは私が信頼するかかりつけ獣医師の言葉です。
「ワクチンの効果は大きいです」と付け加えていました。
ワクチンは決して悪ではありません。
ワクチン普及により飼い犬の命が守られたと言っても過言ではないでしょう。
しかしその陰で、
不運にもワクチン接種で逆に病に罹ってしまう動物がいるのも事実なのです。
その不運が、今回は我が家に、しかも2匹に起きてしまいました。
これまで情報を得られたフェネックのワクチン接種からジステンパー発症、
症状、死亡までの過程をまとめた表です。

5.犬ジステンパーワクチンに関する海外の文献概訳と所見
【犬ジステンパーワクチンの背景】
最初の犬ジステンパーウイルスに対する予防対処の試みは1920年代に始まり、
現在市場に出ているウイルス株であるオンダーステプールト株を用いて
ワクチンが作られたのは1939年のことであった。
しかしこのウイルス株の毒性は強く、
フェレットで50継代の弱毒化を経てもなおその毒性は残るほどであった。
免疫原性の喪失が確認できたのは、鶏卵細胞で200継代後のことである。
1950年代以降はこのオンダーステプールト株が
特にヨーロッパの市場に出ている(文献1)。
【ワクチン株の種類(文献2)】
犬ジステンパーワクチンに用いられていた、
もしくは用いられているウイルス株は主に以下の5種類。
オンダーステプールト株・・・1930年代に北アメリカ農場のキツネに
突如発生した個体から採取
スナイダーヒル株・・・1950年代にNY州で犬の脳から採取
ロックボーン株・・・スナイダーヒル株との見分けがつかない
リダール株
コンバック株
【各文献の調査と考察】
■文献1:歴史的重要性を持つ犬ジステンパーウイルスの
ロックボーン株の光と影
Lights and shades on an historical vaccine canine distemper
virus, the Rockborn strain
V. Martella, M. Blixenkrone-mokker, G.Elia, M.S. Lucente, F. Cirone,
N.Decaro, L. Nielsen, K. Banyai, L.E. Carmichael, C. Buonavoglia
Revised in February, 2010 / Accepted in December, 2010
文献1はロックボーン株に焦点を当てた調査考察であり、
その特性やワクチン使用への問題点を明示している。
◆ロックボーン株の歴史◆
1950年代:イヌ科分離株であるロックボーン株が犬の初代腎細胞で作られる。
36継代後も病原性を保ち、56継代を以って完全に弱毒化されたが、
ウイルスが実際に免疫原性を失うには70継代が必要だった。
1692年以降:ロックボーン株を用いた犬ジステンパーワクチンが
世界的に広まる。
1980年代初頭:犬ジステンパーのロックボーン株と
犬アデノウイルス1型の混合ワクチンの限定されたバッチを
投与したのちに、英国の至る所でワクチン接種後に脳炎を
引き起こす犬の報告がなされた。
ロックボーン株に起因するものだという疑惑は
取り下げられたものの、
1974年と1978年に類似の状況が報告されていることから
ロックボーン株はオンダーステプールト株ほどの弱毒性や
安全性はないとの見解が出た。
1995年:アメリカ合衆国でワクチン接種後に犬が脳炎になった報告があり、
これはロックボーン株を含む多価ワクチン接種でおきたことであると
決定づけられた。
1995年以降:一部の市場からロックボーン株が取り除かれた。
◆調査のキーとなる遺伝子◆
H糖たんぱく質は犬ジステンパーウイルスにとっては
キーとなるたんぱく質であり、
疫学情報を得るには最もふさわしい遺伝子と言える。
ロックボーン株:非常に限られた配列情報しかわかっておらず、
H遺伝子の配列も定かではない。
オンダーステプールト株、リダール株:H遺伝子の配列情報が入手可能である。
病原性のスナイダーヒル株:配列情報は入手可能。
弱毒化したスナイダーヒル株:配列情報は不明。
オンダーステプールト株、リダール株、スナイダーヒル株は
互いに遺伝子的に関連性ああり、
世界に広まっている犬ジステンパーウイルス株とは関連性が離れている。
またオンダーステプールト株と野外の野生型犬ジステンパーウイルス株とは
区別することが可能となっている。
文献1の調査では、ロックボーン株のH遺伝子配列を解明すると共に
ワクチンに用いられているウイルス株の配列調査も行った。
使用したロックボーン株はラボ46継代のものである。
調査対象:別々の会社から販売されている2種類のワクチン(AおよびB)
ラベルにはどのウイルス株を用いているかの明記はなかった。
調査結果:ワクチンA,ワクチンB共にロックボーン類似株が検出された。
ラボ46継代のロックボーン株との違いは、ワクチンAで2種の残基、
ワクチンBで4種の残基で違いが見られただけであり、
その他は完全に一致した。
考察:ロックボーン類似ワクチンは現在も入手が可能である。
ジステンパーに罹患した犬その他肉食獣によって
ロックボーン類似ウイルスは再活性する可能性がある。
生の犬アデノウイルスタイプ1と同じワクチンに、
犬の腎臓で弱毒化した犬ジステンパーウイルスが構成されると
病原性を強めると考えられている。
実験では、腎細胞で弱毒化したロックボーン株を犬の生体で6継代した際に
病原性の再取得が認められ、生体外では犬の一次肺マクロファージでの
10継代で病原性の再取得が確認されている。
■文献2: 犬ジステンパーワクチン株の遺伝子解析に見る問題
Controversial results of the genetic analysis of a canine distemper
vaccine strain
Zoltan Demeter, Lela Alina Palade, Akos Hornyak, Miklos Rusvai
Received in July, 2009 / Received in revised form in October, 2009 /
Accepted in October, 2009
ワクチン接種をした犬が犬ジステンパーに感染しているが、
これらのケースの病原菌は現在使用されているワクチン株とは
質を異にするものであり、その一方で、ワクチン接種を受けた動物が
ワクチン株を一定期間排出することも報告されている。
◆調査のキーとなる配列◆
ヌクレオチド配列。
ヌクレオチド配列では、PSil切断面が個々のワクチン株で特異性があり、
そのためPsil RFLPによって全ての犬ジステンパーワクチン株が
野生型のものと確実に区別が付けられることになる。
調査対象:4種の異なる製造元の、計10種のワクチン商品
6種は同ブランドで、異なる国で購入したもの(ワクチン1~6)、
および1992年、1994年、2006年に販売されていたアメリカの
ヴァンガード(バンガード)という商品名のワクチン
調査結果1・RFLP分析
ワクチン1~6と野外ウイルスから採取した単位複製配列は未消化で残った。
ヴァンガードワクチンでも単位風声配列は未消化で残った。
ハンガリーで普及している犬ジステンパーワクチン製品に対して
RFLP差分解析を行った結果、バンガードに含まれる
犬ジステンパーウイルス株は野生型株としての反応が見られた。
調査結果2・遺伝子解析
ヴァンガードの製造元が謳っている使用ウイルス株が
スナイダーヒル株であるのに対し、
実際のワクチンから採取したウイルス株のヌクレオチド配列は
アメリカ2型群の野生型ウイルス株に近いことが判明した。
ワクチン1~6のH遺伝子の配列を全調査したところ、
そのウイルス株はスナイダーヒル株には全く当てはまらず、
むしろ犬ジステンパーに罹患したレッサーパンダから検出したものに
99.45%の類似性を、北米で自然感染の犬から検出した野生型の株に
98.90%という高い類似性を見せた。
残るワクチン7~10は、アメリカ1型群に属するものだった。
バンガードのワクチンメーカーは、ヨーロッパのヴァンガード製品は
スナイダーヒル株の言うジステンパーに対して犬に免疫を付けさせるという
目的での使用を推奨しているとの声明を出しているが、
スナイダーヒル株のヌクレオチド配列によると、
バンガードワクチンに含まれるウイルス株の単位複製配列は
Psil酵素によって消化されるはずだが、未消化状態で残存するということは、
すなわちこれはウイルス株が野生型ウイルスとして反応していることを
意味する。この矛盾を解明すべく、疑わしいウイルス株に対して
さらなる遺伝子解析をおよび系統発生分析を行ったが、
その結果は調査対象のウイルス株はどこをとっても
スナイダーヒル株とは関連性がなく、むしろ犬ジステンパーに罹患した
レッサーパンダから検出された野生型ウイルス株に
より近いものであるという先だっての調査結果をさらに裏付けるものとなった。
調査結果3・異なる土地で販売されているワクチンの比較
異なる年(1992年と1994年)および異なる土地(3か国)で
製造されたバンガードワクチンを購入してRFLP試験を行い、
これらのワクチンが2006年にハンガリーで購入したワクチンと
同じウイルス株が検出されるかどうかを確かめたところ、
RFLP試験並びにH遺伝子の完全配列の結果、
全てのワクチンバッチで同一のウイルス株が検出された。
考察:
いくつかの可能性が考えられる。
(1)スナイダーヒル株を保存している遺伝子バンクで
誤ったラベリングがなされていたかも知れない
(2)種ウイルスと野生型のウイルス株の遺伝組み換えが
あったかもしれないこと。→のちにこの可能性は消去された
(3)分類上のミスおよび技術的なミス(例えば誤った研究登録)により、
ワクチン登録の際に謝った株にラベルが貼られた
(4)ワクチン製造時におけるウイルス株種の汚染
本調査を受けて、ワクチンメーカーは世界中で製造販売されている
ワクチン商品のウイルス種株の配列を調査し、
この結果を以って製品カタログ記載情報の変更を2009年初頭に行った。
また、このメーカー調査によって、最初に認可されたワクチン商品に
使われたジステンパー株が誤認されていたことも判明した。
これにより、少なくとも1992年以降のワクチンには、
製造元が公言しているものと異なるウイルス株が含まれていることはない
と言える。
■文献3:エキゾチック肉食獣における犬ジステンパーワクチン臨床試験
Clinical trials with canine distemper vaccines in exotic carnivores
Richard J. Montali, Curtis R. Bartz, J. Andrew Teare, Jandel T. Allen,
Max J. G. Appel, Mitchell Bush
JAVMA Vol 183 No. 11, December 1, 1983
実際にエキゾチック肉食獣に犬ジステンパーワクチンを接種して、
その反応を確かめる臨床実験
調査対象と結果:レッサーパンダ16匹中1匹死亡、銀ぎつね1匹死亡、ヤブイヌ、
タテガミオオカミ、フェネックキツネは全頭生存
計16種の調査をおこなったが、それでも調査対象そのものの数が少ないため
決定的なことは言えない。しかしある特定のプロトコルで
レッサーパンダと銀ぎつねが死亡しているので、
今後もそのプロトコルのエキゾチック肉食獣への接種は止めるべきである。
■文献4:南米ヤブイヌにおけるワクチン起因が考えられる犬ジステンパー
Possible vaciine-induced Canine Distemper in a South American Bush Dog
Elizabeth F. McInners, R.E.J.Burroughs, N.M.Duncan
Journal fo Wildlife Diseases, 1992
自然発生は報告のないヤブイヌがワクチン接種後に犬ジステンパーで死亡した。
ワクチン接種後に隔離された状況にあったことを考えると、
ワクチンに起因した発症と思わざるを得ない。
■文献5
ジステンパーウイルス感染症が疑われたフェネックギツネの2例
Two Fennec Foxes Suspected of Canine Distemper Virus Infection
秋田征豪、岩崎雅和、嘉村精一、小島徹、徳永緑、満生香織、吉田宗則、
田中治
クウ動物病院
松原動物病院
第25回動物臨床医学会(2004)
この文献では非常に興味深い報告がなされている。
購入した生後2か月のフェネック(既にワクチン2回接種済み、詳細不明
)がジステンパーのような症状を発症し、
同時に以前より飼育していた1歳5か月のフェネックも
同症状を見せた後に2匹とも死亡した。
ワクチン接種の詳細が不明なのが悩ましい。
文献2でも述べられているが、
ワクチン接種後の個体は一定期間でウイルスを排出する。
もし購入した子供のフェネックがワクチン接種から間もなくの譲渡であり、
このウイルス排出により以前から飼育していたフェネックにも
ジステンパーの感染がおきたのであれば、
多頭飼育のワクチン接種の危険性を訴えられるところである。
■文献6
Canine Distemper Virus Infection in Fennec Fox
Gye-Hyeong Woo, Yeon-sook JHO, and Eun-Jung BAK (KOREA)
Received in November, 2009 / Accepted in March, 2010
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