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ペットの剥製~フェレットを永遠に~

フリーズドライ技術であの子の全てをそのままに。
もしあなたの友人が、家族がこう言ったらどうしますか。

「私、フェレットが死んだら剥製にするの。」

北米では自宅で剥製ができる機械も販売されているほど盛んですが
宗教観の違いからか、日本ではあまり浸透していないペットの剥製。

今日はそんなペットの剥製で日本で唯一の機械と技術を持つお店を訪ねました。

静岡県でペットのフリーズドライ剥製に取り組む駿河剥製さんです。
お店に着くと2階のベランダでふくろうさんが
そして1階の玄関では店主の鈴木さんが出迎えてくれました。
質問:
剥製を始めたのはいつ、どんなきっかけからですか。

鈴木さんの答え:
私が29歳の時ですから今から30年以上前になります。
昔から友達に動物博士と呼ばれるくらい動物が好きだったのですが、
兄が猟をやって剥製を作っているのを見て自分もやりたい!と思いました。

それから東京に行き、東京剥製標本社さんで半年間修行しました。
小さなボロいアパートに住み、朝から晩まで剥製を作っていました。
東京剥製さんは今でも私の師匠です。
駿河剥製さんのお店の中には沢山の賞状が飾られています。
全て、鈴木さんが剥製のコンクールで賞を取ったときのもの。鈴木さんの腕前が確かであることの証明です。

今ではこのようなコンクールはなくなってしまいました。
その背景には猟師の高齢化に伴う剥製業界の縮小化があります。

剥製はそもそも猟の獲物の姿を残しておくためのものでした。
30年前は盛んに行われていた狩猟ですが、山林が宅地造成されて猟をする場所がなくなってきたことや
猟師の年齢層が上がってしまい、猟をする人たちの数が減ってきました。現在の猟師の多くが60代~70代です。

そして猟師が減り、獲物の数が減り、剥製の依頼数が減り、剥製を本格的に行う人の数が減りました。
また、バブル時代は依頼が多かった博物館や学校での標本作成の依頼数が減ったことも剥製業界には痛手だったのです。

現在も東京近郊に残る剥製職人さんとして、腕に狂いがないと言われている人物が鈴木さんの知る限りで5名ほどいます。
彼らが構える剥製屋さんは、

・東京剥製標本社
・尼ヶ崎剥製標本社
・上野剥製所
・中曽根剥製所
・名倉剥製所

そして今日取材を許可してくださった駿河剥製さんもそんな剥製作りの達人です。

さて、東京近郊だけでも6社の信頼できる剥製屋さんがあります。そんななかで駿河剥製さんに取材をお願いした大きな理由は
日本でただ1社、フリーズドライのペット剥製の技術を持っていることです。

そもそも通常の剥製とフリーズドライの剥製は何が違うのでしょうか。その違いに迫ります。

鈴木さんに作り方の違いを、材料や機械を実際に見せてもらいながら説明していただきました。
従来の動物剥製
通常の剥製の作り方をざっくりとご説明しましょう。

まず動物の皮を剥ぎます。耳、口元、爪周り。すべては1枚の皮でつながります。
そこに本来の剥製技術を持っている職人であれば、
ウレタン樹脂でできたマネキンを着せて形を整えます。

本来の、と書いたのには理由があります。
なかにはマネキンを使わずにぬいぐるみを作成する要領で
詰め物をぎゅうぎゅう詰めて剥製を作っている人がいるためです。

そうするとどんな剥製が出来上がると言うと
ほとんど凹凸のないひょろっとした体型や、
逆に細くあるべきところが変に太い剥製となってしまいます。

従来の技術で作った剥製は皮や毛、爪はその動物自身のものですが
それ以外の中身全ては別物となります。
形がフェレットのようです。
これはテン用のマネキンです。
鈴木さん作成の鹿の剥製です。

骨格や筋肉の盛り上がりが見えます。
この体の凹凸を作っていくのが非常に難しく
職人技の見せ所とも言えます。

フェレットの剥製であれば8時間。
このくらいの鹿になると3~4日かかります。
オシリの部分。尻尾の根元に筋肉があるのがわかります。
同じく首周りから背中。
従来の剥製がポーズを自由自在に取れるのは、中身がマネキンだからです。
さらにこのマネキンに加えて針金でポーズを固定することで、片足を上げた姿や2本足での立ち姿が可能になるのです。

さあお待ちかねのフリーズドライ技術を紹介していただきましょう。
ペットのフリーズドライ剥製
じゃーん。
これが鈴木さんが保有するフリーズドライ剥製機です。2台あります。

質問
高そうな機械ですね。いくらくらいするのですか。

鈴木さんの答え:
新品で購入したら600万から800万円です。


質問:
フリーズドライの剥製技術を知ったのはいつですか。

鈴木さんの答え:
日本にフリーズドライの剥製技術が知られたのは今から30年程前です。
私もそのときに知りました。

アメリカから1台、この機械が当時輸入されたのですが
剥製について何もわからない人たちが使ったため
猫を剥製にするつもりがなんとミイラにしてしまったのです。
このことはフォーカスという雑誌に記事として載ってしまいました。

以来、この機械を持っているという人の話を聞くことはありませんでした。

当時の私もこの機械がとてもほしくて
7ヶ国語を話す知人がいたのでその人に頼んでアメリカから輸入しようとしたのですが、
日本に住む日本人の私にはこの機械を売ってもらえませんでした。
質問:
そんなに入手が難しいものを、いつどうやって手に入れたのですか。

鈴木さんの答え:
YFFという会社のグレイ氏が横浜でフリーズドライの剥製を作っていることを知りました。
私が手に入れられなかった機械を2台も持っていることや、剥製を作っている外国の人が日本にいることに驚きました。

3年前、グレイ氏が事情により日本を離れることになってこの機械をオークションに出すという情報を得ました。
私はグレイ氏に直接交渉し、機械を2台とも譲っていただくことができたのです。
グレイ氏が日本でフリーズドライの剥製を作って3年目のことでした。
そして私がこの機械を譲り受けて同じく3年になります。
2台がフル稼働中。
フリーズドライのペットの剥製の作り方をざっくりとご説明します。

お腹に切り目を入れ、内臓と脂肪を取り除きます。
内臓は入れたままでも大丈夫ではあるのですが、高温多湿となる日本の気候ではどうしても腐敗が気になります。
そこで鈴木さんは内臓を取り除いてからフリーズドライさせています。

フリーズドライでネックになるのは内臓よりもむしろ脂肪です。
あまりに太りすぎの動物の場合は、内臓周辺の脂肪に加えて皮と筋肉の間にある皮下脂肪も取り除きます。
細身のペットであれば、この皮下脂肪は抜かなくても問題はありません。

内臓と脂肪の一部を取り除いた体をガラス管に入れて機械の扉を閉めます。
ガラス管の中を真空にします。
この時の温度調整が非常に重要で
鈴木さんの長年の職人としての勘が働くところです。

30年前に猫をミイラにしてしまったのは
この時の温度調整ができていなかったためと思われます。
管が通っています。
この管からは水分が吸い取られていきます。
フェレットで約2週間。
犬や猫なら1ヶ月から2ヶ月で機械から出せます。

その後は粉をかけてクリーニングをし、
粉を最後にきれいにはらったら完成です。
質問:
従来の剥製では、中に入れるマネキンや針金のおかげで
ポーズが自由自在だと聞きました。
フリーズドライの場合はどうですか。

鈴木さんの答え:
フリーズドライ製法は従来の剥製に比べてポーズは限られます。
筋肉や脂肪(の一部)が全てそのペット自身のものであり、
すでにそれらが軟化してしまっているためフニャフニャしています。

そのためよく博物館にある剥製のような迫力のあるポーズはできません。

フリーズドライの剥製は寝姿や座り姿が最適です。
例えばこの猫ちゃん。この座りポーズを取ってもらうためには、右の写真のマネキンのように台の上に置き、
取りたいポーズを取らせて棒で支えて形を整えていきます。

体内に針金は入れません。
外から棒やピンで押さえたり支えたりしながらこのポーズで固定するのです。
フリーズドライの剥製では、そのペットの内臓と一部の脂肪以外は全て体内に残ります。

・眼球
・爪
・舌
・歯
・鼻

ぜぇーんぶ、ペット自身のものがそのまま残るのです。

しかし眼球は水分が多いためどうしても義眼を外からかぶせる必要があります。
ちょうどコンタクトレンズをはめるように、本来のその子のお目目の上から義眼をかぶせます。
従来の剥製とフリーズドライの剥製
お鼻対決
従来の剥製
お鼻が何となく作り物っぽい。
フリーズドライの剥製
お鼻周りがとても美しい。
通常の剥製とフリーズドライ剥製の比較
<従来の剥製>

【メリット】
・ポーズが自由自在
・工数が短い。


【デメリット】
・皮以外は作り物を使う。



<フリーズドライの剥製>

【メリット】
・舌や眼球までも体内に残る。

【デメリット】
・工数が長い。
・ポーズは寝姿、座り姿に限られる。(希望があれば針金を体内に入れてポーズを作ることも可能。)

鈴木さんが部材を購入するためのカタログ。
日本では手に入らないため海外から部材を輸入しています。
マネキンの数がすごいです。
しかも犬から猫からパンダまで。
座る、立つ、歩く、跳ぶ。
あらゆるポーズのマネキンがあります。
通常の剥製を作るにはこのマネキンが必要。
義眼。
これはフリーズドライでも必要。
こちらはちょっと古く10年前の雑誌。
従来の剥製で必要な部材が載っています。フリーズドライ製法では不要です。
家庭用の小型フリーズドライ剥製機が販売されているようです。→




さて、以下は鈴木さんがフリーズドライ製法でペットの剥製を始めてからの
エピソードの数々です。

フリーズドライで作った剥製の写真と共にご紹介しましょう。
鈴木さんがグレイ氏からフリーズドライの剥製機を譲り受けて
最初に依頼を受けたのは犬でした。

幸運なことに同じ静岡市内から来たわんちゃん。

鈴木さんは緊張しました。
従来の剥製ならお手のものですが、フリーズドライ剥製は初めて。
しかし出来上がりは素晴らしく、飼い主さんは非常に喜んだと言います。

そのわんちゃんは静岡市のとあるご夫婦に大事に飼われていました。
特に奥さんがその犬を溺愛していたため、
わんちゃんの死後は奥さんが発狂寸前まで陥っていました。
そんな奥さんを見るに見かねて、ご主人は鈴木さんを頼ってきたのです。

できあがったわんちゃんの剥製。

奥さんはそれはそれは喜んで、
今でも毎日そのわんちゃんの剥製を布団の横に置いて一緒に寝ているそうです。
日本で初めてフリーズドライ剥製を
手がけていたグレイ氏の作品。
フリーズドライ製法では、通常の剥製では不可能な依頼も受けられます。

腐敗した動物の剥製です。

死後1ヶ月が経過したであろう猫ちゃんの体を持ってきた飼い主さんがいました。

どうしても。どうしても剥製にしてほしい。

通常の剥製屋さんでは断られてしまったため
一縷の望みを抱いて鈴木さんのところにやって来たのでした。

聞けば猫ちゃんはある日姿を消し、
飼い主さんはきっと死んでしまったのだろうと思い
それでもその体を求めて探し続けたそうです。

1ヵ月後。飼い主さんは変わり果てた猫ちゃんの体をようやく見つけました。
既に腐敗が進み、頭を触ると頭皮がズルッと動いてしまうほどでした。

猫ちゃんの体はフリーズドライの機械に入りました。

そして全ての工程を終えた猫ちゃんの体は
生前の姿そのままに飼い主さんの手元に帰っていきました。
てへっ。
敬虔な仏教徒の飼い主さん。
大事に飼っていた犬が老衰し、その体を剥製にしたいと考えました。

飼い主さんが信仰する宗教では火葬が基本です。

飼い主さんは通っているお寺さんに
犬を剥製にしてもいいものかどうか相談をしました。

「大切にされていたペットですから大丈夫ですよ。
 ぜひ剥製にしてこれからも可愛がってあげてください。」

ありがたい言葉をお寺さんからいただいた飼い主さんは
犬の体を駿河剥製まで持ってきたのでした。
フリーズドライの剥製はもちろん完璧ではありません。

加齢や闘病で毛が抜けてしまったペットの場合は
出来上がりが飼い主の思うとおりにならないことがあります。

それは体内の血管や筋肉が浮き出て見えてしまったり
色が真っ白に抜けてしまうためです。
本来ならそうした出来上がりも毛で覆われていれば全く見えません。
しかし毛がない場合は全て丸見え、もしくは皮膚の色が真っ白になるのです。

鈴木さんの工程では、そのように毛が抜けたペットの場合は
飼い主さんの希望があれば、体に薄く色を塗って人工の毛をかぶせます。

しかしそれはあくまで人工の色・人工の毛ですので
そのペットが持つ本来の毛色とはどうしても異なってしまいます。

毛が抜けてしまったペットを依頼する場合は
こうしたことを事前に了解した上で依頼をお願いします。
今回、鈴木さんからのご厚意で特別割引を設けていただきました。

「いたちなあたちを見ましたっ」

と言ってフェレットのフリーズドライ剥製を依頼した方に限り特別料金で剥製を作っていただけます。

フェレット剥製料金 40,000円 → 37,000円

ご注文・お問い合わせは
駿河剥製さんへ直接お願いします。

2011年5月時点の待ち時間は4~5ヶ月間です。順番が来るまでは、駿河剥製さんのほうでペットの体を保管してくれます。

ご注意)
剥製はあくまで剥製でしかありません。そこに生前の輝きを見出せないこともあります。
生前の元気なときと全く同じ状態を求めてはいけません。
どんな姿で帰って来ても全部受け止める!そのくらいの気持ちで送り出してください。

。。。とは言っても、鈴木さんの腕前は確かです。安心して依頼しましょう。

駿河剥製の鈴木さん、お時間をいただきありがとうございました。

30年の経験と実力があります。
あなたのペットの体を大事にフリーズドライ剥製にいたします。
またおいで。
☆おしまい☆