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2021年10月
電車を降りて駅のホームから階段を下りると
前を歩く男性が傘をだらーんと持っているのが見えました。
その男性が階段を降りるたびに、
カツンカツンと傘の先っぽが階段に当たります。
傘の先は少しだけ左に曲がっていました。
たぶん、この傘はこの男性に日々こうして荒く扱われているのでしょう。
カツンカツン
男性が一段一段降りるたびに
一段一段の階段に頭をぶつけながら、
イタイイタイという傘の声が聞こえてきそうです。。
階段を降り切ると、男性は平坦な道も傘を引きずって歩いていました。
ズルズル ガリガリ ズルズル ガリガリ
男性に引きずられて、しょんぼりと連れられていく傘の顔。
傘は持ち主を選べません。
手にしていた傘を持ち上げて、じぃーっと見つめてみました。
これからも一緒によろしくね。
2021年10月
「山小屋に泊まるなら、何を持っていくかという話になってね。」
おしゃべりな子供が
夕食時にいつものようにペラペラと話し始めました。
どうやら学校の授業で、山小屋について話し合ったようです。
「Tがね、芝生を持って行くって言ったんだよ。」
芝生?山小屋に芝生?なぜ。
「みんなで座ったりカードゲームをしたいからだって。」
ほお。
「じゃあレジャーシートでよくね?って僕は思った。」
正しい。
息子が正しいことは日常でほとんどないのですが、珍しく正しい。
でもでも、山小屋に芝生♪
Tくん、可愛いです。
2021年10月
こんな大人しい私から
どうしてこんな元気な男子が生まれてきたのだろう。
そう思うくらい、息子はワンパク一直線です。
「まさしく貴方の子供じゃないの。」
私の友達はそう言うでしょうが
とにかく息子は元気すぎて手に負えません。
そしてかなりのおしゃべりです。
ご飯を食べながら、あいつはこうでこいつはこうで、と
学校の友達の話を延々としてくれます。
時折、その名前を聞くのは初耳だわ、という子供の名前が
息子の口から出てきます。
その子の名前、初めて聞くけれど普段は一緒に遊ばないの?
「遊ばない。」
なんで?
「静かだから。」
おとなしい子とは性格が合わないから遊ばないのでしょう。
「僕、活発♪」
ポーズを決める息子。
活発、という言葉の範囲内で収まってくれればいいのですが。
それでも女の子には弱いようで、
「Yがいつもいきなり蹴ってくる。」
「Kがいつもベラベラと話しかけてきてうざい。」
「Hは急に追いかけっこを始めてくる’
と、女の子には頭が上がらないようです。
「Mに『最近やさしくなったね』と言われた。」
女の子からの評価に一喜一憂。
活発に楽しく学校生活を謳歌しているようで良かったです。
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2021年10月
モデルナのワクチンを接種して体調を崩したAさんが
なにやらどんよりとした面持ちで出社しました。
「ワクチン。。。ニュースになっていますよね。」
モデルナワクチンに異物混入のニュースが
世間を駆け巡ったのはこの前の日のことでした。
まさかドンピシャだったのですか。
尋ねる私に、即座に首をぶんぶんと横に振ったAさん。
「調べていません。怖くて。」
確かに。もし該当していたら怖いですよね。
「その時点で具合が悪くなります。」
調べてあげましょうか。
「止めて下さいっ。絶対に調べませんっ。」
知らぬが仏。昔の人はよくいったものです。
知らないほうが幸せなこともあります。
知らないほうが、何も考えずに日常を送れることがあります。
始業時間を過ぎ、数時間が経過した頃。
隣からつぶやく声がしました。
「モデルナ。。。」
めっちゃ考えてるじゃないか、Aさん。
知っても知らなくても、
不幸せなことが世の中にはあるみたいです。
昔の人よ、こういうのはどう表現すればいいですか。
2021年10月
最近はAさんとよく話をします。
というか、Aさんからよく話しかけてきます。
今朝も会社に到着して早々に、隣から声がしました。
「当たりでした。」
えっっっ。それはもしかして。。。
「モデルナの異物混入ロットでした。」
彼が握り締める手の中には、
前に見せてもらったワクチン接種証明書がありました。
調べちゃったのですね。
「どうしても気になってしまって。」
パンドラの箱を開けてしまったAさんの体の中には
ほんのちょっぴりの異物のステンレスが流れ込んでいることになります。
えーと。大丈夫ですか。気分が悪くなったりしていませんか。
「大丈夫ですっ。私はもう強いんですっ。鉄の男なんですっっ。」
そう言って、ふんっと体を大きく見せたAさん。
いや、Aさん、ステンレスって鉄じゃないから。
2021年10月
今のチームに異動してきたのは今年の4月でした。
前のチームでの仕事が一段楽したのと、
今のチームの仕事が人手不足になったので
また身売りされて飛ばされてきたのです。
チーム内でも新型コロナ肺炎対策のワクチン接種が進んでいます。
1ヶ月半ほど前に隣の席のAさんが
「見て下さい、これです。」
と見せてくれたのは、ワクチン接種を証明する紙でした。
私はまだ打っていないので、物珍しい感じでその紙を見つめました。
へぇー、こういうのなんですね。
「はい。弟の会社で職域接種があって、
枠が空いたから打たせてもらったんです。」
良かったですね。
ここでその話は終わりました。
そして1ヶ月前に、2回目のワクチン接種を打った翌日に体調を崩し
急に会社を休んだ彼の抱えていたプロジェクトは大事になりました。
「体調が悪くて休むのは仕方が無い。
でも今回はワクチン接種による体調不良だ。
これだけ世間でワクチン接種後に寝込むことが多いと
騒がれている中で、それを想定もできずに
先の予測も立てられずに周囲に迷惑をかけて
いったい何事だ。休むなら休むで色々と整えてから休め。」
割と大人しい人が多いこの会社には珍しく、パワフルな上長が
Aさんの座っている椅子を蹴りながら叱責していました。
今のチームに異動になって半年。まだまだ知らないことが多いですが
この上司の激しさも私には驚くことの1つでした。
Aさんの椅子を蹴り飛ばして、プンプン怒りながら部屋を出た上司。
大丈夫かしら。
残された隣のAさんの顔を見ることができませんでした。すると、
「いやぁ、しびれますねぇ。」
ほい?
隣から私に話しかけている様子のAさんが
私の目の端っこにいました。
恐る恐るAさんのほうに顔を向けると
Aさんがニコニコしながら私を見ていました。
「怒られちゃいましたよー。ははは。」
いやいやいやいや。椅子を蹴られたんですよ、アナタ。
そして部屋に戻ってきた上長。
ちょっとちょっと、Aさんが笑っているんですけれど。
そう上長に伝えると、
「当たり前や。こいつは好きやねん、怒鳴られるのが。」
なおいっそう大きな声で上長は言いました。
「こいつ、完全なMや。」
えええええええええ。
「なんや、まだ笑っとんのか。笑い事じゃないんやで。
みんなに偉い迷惑かけたんやで。わかっとるんか。」
バシッ。
今度は上長が軽くAさんの頭を小突きました。
ひえー。今度は暴力だ。
「すみません、すみません。」
満面の笑みを浮かべながら謝り続けるAさん。
なんやねん、この職場。