出産いたち道

急遽帝王切開

人生初の手術室。
手術台に載せられるときも陣痛の合間を見計らってもらいました。

「はーい、私、麻酔科の者です。よろしくぅ。」

よろしくぅ?

なにやらファンキーな麻酔の先生です。
なんて言っている間に陣痛が来ました。ううう痛いぃーーー。

「陣痛も経験できたんだねー。」

痛みに耐えつつも、このファンキーな麻酔科の先生の言葉が大きく胸に残りました。
そうだなぁ。結局は切ることになって、いわゆる「生みの苦しみ」を知らずに子供を生み出すことになりました。しかしこうして少ないものの陣痛を味わうことができたのは私にとって大きな糧となりそうです。

「はい、背中丸めて。ちょっとだけチクンとするだけだからね。」

手術をする際の麻酔の前の麻酔(?)を、背中にしてもらいました。全然痛くありません。

「はい次に奥まで麻酔を入れていきますよ。でも痛みは感じないはずです。」

確かに。何も感じませんでした。

「これからお腹の感触が弱くなるからね。それはぜーんぶボクのせいね。」

先生のせいなんですね。

「はーい、麻酔終了。チェック行くよ。」
先生が肩に何かをチクチクと刺しました。「これが肩ね。」次にお腹にチクチク。「ここは感じますか。」

麻酔をかけていない肩と、麻酔を効かせるべきお腹との感触を比較していきます。

「はいもう一度行くよー。こっちが肩ね。じゃあここは?さっきに比べて感覚はどう?」

お腹のチクチクはさっきより鈍く感じられました。

「よしっ。はい先生、やっちゃってちょーだいっ。」

やっちゃってちょーだい?

顔の前にカーテンがかかっているので手術内容は見えませんが、なにやらぶにぶにとお腹をいじられているのはわかります。
手術の間は助産師さんや麻酔科の先生が入れ替わり私に話しかけます。気を紛らわせるためですね、きっと。
さらに手術室には軽快なJ-POPの音楽が流れていました。先生の「メス」などいう声や、器具のカチャカチャする音を紛らわすためかと思われます。

ファンキーな麻酔科の先生のファンキーな会話に笑わされながら手術が終了。

元気な産声が聞こえ、横を向くと取り上げられたばかりの子供がいました。

子供を見た最初の印象は「こんなに大きいとは思わなかった。」です。
私は臨月になっても他の妊婦ほどお腹が出ませんでした。それは胎児の大きさが個人クリニックでは取りあげるには不安が生まれるほど小さいからだと思っていました。なのに実際に目にした赤子は私の想像よりもずっと大きかったです。

子供の体を拭き終えた助産師さんが、私に子供を見せてくれました。

しかしこの瞬間から猛烈な吐き気が襲ってきました。すぐに眠くなる薬が投入され、私の意識が遠のいていきました。